shiozyさんと「山田さんち」のなほさんとのコラボ企画。
お題は「おひなさま・雛人形」。
shiozyさんは「ショートショート」。
なほさんは「絵」。
そして私は「短編小説」…って、この長さは「ショートショートショート」?
まるで、ショートがエラーしてるみたな物語です。
では、はじまり、はじまり~。。。
============================
昔、基町に野球場があったらしい。
彼らの間で、そんな噂が広まったのは、
桃の節句も近づいた2月末のことだった。
「ぼく、左大臣に聞いたんだ」
今日も囃子の五人が話しこんでいた。
「そごうの前には、横断歩道もあったんと」
「そんなんあったら大渋滞じゃん」
「うん、渋滞しとったらしい」
「そんな交差点に野球場があったなんて信じられん」
「いや、野球場があったのは原爆ドームの前らしい」
「なんでなくなっん?」
「原爆が落とされたからかな」
五人囃子はそれぞれ考え込んだ。
由緒ある衣装を身にまとっているものの歴史は苦手らしい。
*歴史という過去にしてはならない原爆ですが!
そして五人は自分たちの無知をあどけない笑顔で隠し、話し続けた。
「さすが左大臣さんは物知りだね」
「やっぱ年寄りだけあって、昔のことはよぉ知っとてだね」
それまで黙ってきいていた右大臣が、
チラリと五人囃子を見上げた。
「お前達、いい加減にしなさい。
いくら左大臣が年をとっているからといっても、
作られた年はわしら皆同じだぞ」
この雛人形たちは、皆、2020年生まれ。
この家の長女が生まれた年に作られ、
長女の祖母が購入した人形たちだ。
毎年3月を迎える頃になると押入れから出されて飾ってもらえる。
今年で10年目だ。
一応、長女の持ち物なのだが、
飾りつけは長女の母親の役目だ。
毎年、五人囃子に、それぞれ笛や太鼓を持たせながら、
「お母さんが子供の頃には、日本にも春があったんだけどねぇ」
と呟く長女の母。
「桃の節句って言ったって、
今じゃ、桃も植物園に行かなきゃみられない」
とかなんとか。
「基町に野球場があったってことは、
広島には2つ野球場があったのかな」
「うん、駅にもあるもんね」
「2つもチームがあったなんてスゴイね、広島は」
「カープも強かったんだろうね、昔は」
やはり歴史は苦手らしい、五人囃子。
そんな無責任に話し続けている五人囃子に眉をしかめ、
右大臣は声をはりあげて左大臣に話しかけた。
「左大臣どのっ、左大臣どのっ!」
「なんじゃ?」
「確かでございますか?」
「なにがじゃ?」
「基町に野球場があっただなんて!」
「それは本当の話よの」
「何を根拠に?貴方も我々と同い年でしょうに!」
「なに、去年、押入れで隣におったヤツにきいたんじゃ」
「押入れで隣に?」
「この家のお父さんの持ち物だったらしいがな。
ヤツは幸せ者だよ。
本来は5月にしか出してもらえないはずなのに、
夏のあいだは外に出られて、
しかも、その野球場を泳いでいたというから」
…おあとがよろしいようで。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「私もこのお題で書いてみたよ」とか、
「これの続編を書いてみた」と言われる方は、
トラックバックしていただくか、
下記コメント欄にURLのご記入をお願いします。
お仲間募集してま~す。
コチラ↓お願いします。
お題は「おひなさま・雛人形」。
shiozyさんは「ショートショート」。
なほさんは「絵」。
そして私は「短編小説」…って、この長さは「ショートショートショート」?
まるで、ショートがエラーしてるみたな物語です。
では、はじまり、はじまり~。。。
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昔、基町に野球場があったらしい。
彼らの間で、そんな噂が広まったのは、
桃の節句も近づいた2月末のことだった。
「ぼく、左大臣に聞いたんだ」
今日も囃子の五人が話しこんでいた。
「そごうの前には、横断歩道もあったんと」
「そんなんあったら大渋滞じゃん」
「うん、渋滞しとったらしい」
「そんな交差点に野球場があったなんて信じられん」
「いや、野球場があったのは原爆ドームの前らしい」
「なんでなくなっん?」
「原爆が落とされたからかな」
五人囃子はそれぞれ考え込んだ。
由緒ある衣装を身にまとっているものの歴史は苦手らしい。
*歴史という過去にしてはならない原爆ですが!
そして五人は自分たちの無知をあどけない笑顔で隠し、話し続けた。
「さすが左大臣さんは物知りだね」
「やっぱ年寄りだけあって、昔のことはよぉ知っとてだね」
それまで黙ってきいていた右大臣が、
チラリと五人囃子を見上げた。
「お前達、いい加減にしなさい。
いくら左大臣が年をとっているからといっても、
作られた年はわしら皆同じだぞ」
この雛人形たちは、皆、2020年生まれ。
この家の長女が生まれた年に作られ、
長女の祖母が購入した人形たちだ。
毎年3月を迎える頃になると押入れから出されて飾ってもらえる。
今年で10年目だ。
一応、長女の持ち物なのだが、
飾りつけは長女の母親の役目だ。
毎年、五人囃子に、それぞれ笛や太鼓を持たせながら、
「お母さんが子供の頃には、日本にも春があったんだけどねぇ」
と呟く長女の母。
「桃の節句って言ったって、
今じゃ、桃も植物園に行かなきゃみられない」
とかなんとか。
「基町に野球場があったってことは、
広島には2つ野球場があったのかな」
「うん、駅にもあるもんね」
「2つもチームがあったなんてスゴイね、広島は」
「カープも強かったんだろうね、昔は」
やはり歴史は苦手らしい、五人囃子。
そんな無責任に話し続けている五人囃子に眉をしかめ、
右大臣は声をはりあげて左大臣に話しかけた。
「左大臣どのっ、左大臣どのっ!」
「なんじゃ?」
「確かでございますか?」
「なにがじゃ?」
「基町に野球場があっただなんて!」
「それは本当の話よの」
「何を根拠に?貴方も我々と同い年でしょうに!」
「なに、去年、押入れで隣におったヤツにきいたんじゃ」
「押入れで隣に?」
「この家のお父さんの持ち物だったらしいがな。
ヤツは幸せ者だよ。
本来は5月にしか出してもらえないはずなのに、
夏のあいだは外に出られて、
しかも、その野球場を泳いでいたというから」
…おあとがよろしいようで。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「私もこのお題で書いてみたよ」とか、
「これの続編を書いてみた」と言われる方は、
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