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家族らんランRUN

4月30日 中国新聞「くらし面」に掲載された13回目です。
12回まではHPで読めますので、興味をもたれた方は右のリンク欄より「柿ちゃん」HPまでお越しください。

(第19回江の川親水マラソン 4月8日、広島県三次市)

 マラソン大会と言えば、早朝4時起きや5時出発していたが、今日は8時まで朝寝坊。しかも、娘は、お気に入りの日曜朝のアニメまで見ている。だって、今日の会場は自宅から歩いて3分の親水公園。よっしゃ、ホームグランドだぞ!と意気込むも、4.2㌔のコースを走るのは娘のみ。入学式を終えたばかりの娘が、小学生として走るデビュー戦。保護者同伴でないと参加できなかった幼児時代を終え、娘、念願の『一人で走る』大会なのだ。

 二日前に入学式へと歩いた満開の桜並木をくぐり、会場へ。大勢のランナーや応援する家族や友人で河原も土手もにぎわっていて、いつもと様子が違う。雲ひとつない晴天で、マラソン大会独特のわくわくした臨場感があふれかえっている。
 小学生から一人で参加できるとはいえ、低学年は親と一緒の姿が多い。娘、大丈夫か?不安がよぎる。夫も同じだったようで、何度も何度も「一人で大丈夫?お父さん、ついて行こうか?」と尋ねている。って、あれれ?夫、なんで、ここにいる?10.5㌔コースにエントリーしてたんじゃ?…してたが、珍しく体調不良のため棄権。酔っても見た目が変わらない夫は、具合が悪くても見た目が変わらない。だから健康そうに見えるのだけど、「なんか調子悪い」と。
 「娘がゴールするのを見るのもいいんじゃない?」と妻はフォロー。そんな夫は、走りたい気持ちを抑え、会場へ来たものの、ランナーがぞろぞろ準備しているのを見ると、心の中でモヤモヤが爆発しそうになっている。健康具合はわかりにくくても、そういう心理状態は見た目でわかりやすいんだよね、夫。さらに、一人で頑張るという娘が心配でしょうがないのも伝わってくる。
 スタートぎりぎりまで「本当に大丈夫?」と娘にくいさがっている。娘は緊張しながらもクールに「大丈夫」と言い切る。翌日からランドセル背負って登校していくのも、ついて行きたがりそうだぞ、夫。嫁にまでついていくなよ…。
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 よーい、ぱんっ!245人のランナーが駆けだしていく。緊張した表情のまま、娘も。土手にかけあがり、沿道の大歓声の中を。大柄なランナーに囲まれて、うずもれそうになりながらも。左手に桜並木、右手に馬洗川・江の川・西城川を見下ろして。小さい後ろ姿が、どんどん小さくなっていく。ああ、親って漢字は『木の上に立って見送る』って書くんだったな。後ろ姿を追うように、夫と土手を歩く。
 人見知り激しく、親の手を離せなかった2年前が嘘みたい…と感傷に浸る間もなく先頭の選手が戻ってくる。トップは広島県の代表にも選ばれた中学生だ。さすがに走りが違う。次々に帰ってくるランナーを拍手で迎えながら娘の姿を待つ、待つ、待つ…見えたっ! 真っ赤な顔で帰ってきた。照れくさそうに微笑んで。結局、コースの半分まで迎えに行っていた夫を従えて。スローペースではあるけれど、ひたすら走り続け、32分でゴール。たいしたもんだよ、娘。なんだか、顔つきも変わってみえるよ。
 さて、体調が悪いと言ってた夫。その日の午後、病院で診てもらったところ「インフルエンザですね」。だが、娘の頑張りに笑顔満開。なによりも娘が一番の薬なんだね、夫。


コチラ↓も、またまた、よろしくお願いします。

by a-kik | 2007-05-01 14:15 | 中国新聞「家族らんランRUN」

芥川賞最年『長』受賞に挑む柿(52になったよ)の日常。なんだかんだ走ってます。


by a-kik