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コラボ『流行』

流行り物には疎い私です。
「流行」に振り回されるのが嫌で、
昔っから、自分のスタイルって持ってるつもりですが、
ときどき、そのどれかが、「流行」に当たることがあります。
そしたら、居心地わるくなって、そのスタイルを手放すこともあります。
…結局、「流行」に振り回されてるんでしょうね。

今回も、創作短編です。
はじまり、はじまりぃ。。。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
 
 『流行』

流行おくれにならない方法は、
流行にのらないことよ。

これが姉の口癖。
そう言いながらも、
「おひとりさま」だったり、
「アラフォー」だったり、
かなり流行の最先端をいってる姉。

姉は、流行には乗らないくせに、
ここ十年くらいカヌーに乗っている。
一週間くらい帰ってこないなぁ…と思ったら、
汚れ物の山をかかえて、
日焼けして帰ってくる。
川原でキャンプしながら川下りをするらしい。
帰ってくるときは清潔なので、
毎日川で行水しているのかと思ったら違った。
帰宅する前に仲間と温泉に行くらしい。
垢まみれの仲間と一緒に。
温泉にしてみたら、いい迷惑だろうな。

四万十川に行ったときは、
アウトドア料理の達人も一緒にいたらしく、
肥えて帰ってきた。
「四万十川ならぬ肥満と川よ」と笑って。

江の川の下流ツーリングには、
私も連れていってくれた。
一人乗り用のカヤックに、それぞれ乗り込む。

ヤマセミを間近でみたのは初めてだった。
カワセミのお腹が本当にオレンジなのにも驚いた。
ケケッ!と高笑いするように鳴きながら飛んでいく姿にみとれていると、
姉が声をかけてきた。

 「カワセミのお腹って、どうしてオレンジか知ってる?」
 「…保護色じゃあないなぁ。なんで?」
 「ふっ。スイカだったら重いでしょうが」

真剣に答えた私が悪ぅございました。

しばらく漕いでいると、お腹がすいてきた。
姉も同じだったらしい。
こっちを向いていった。

 「この瀬をこえたら、上陸してお昼にしよう」

どの瀬?
と思う間もなく、ゴーゴーと急流の音が響いてきた。
だ、大丈夫か、私?
とドギマギする間もなく、私のカヤックは瀬にすいこまれた。
うひゃー、こ、こえーっ!

 「流れにさからわず、しっかり漕いで!」

姉の怒鳴り声がかすかに聞こえる。

 「ほら、しっかり!
  流れにおくれないで!
  流れにのって!」

姉ちゃん、今になって流行のアドバイスですか…。

でも、付け焼刃がきくもんじゃない。
目の前に迫ってくる岩にひるんだすきに、
カヤックは横向きになり、
岩にはりつき、
大きな波をかぶって…ざっぶ~ん!
次の瞬間、私は瀬の中、川の中。
ボゴボゴボゴ。。。
鼻から水がはいってくる。
ドンドカドン。
川底の岩で頭をうつ、腰をうつ、尻をうつ。
落ち着け、落ち着け、習ったとおり、カヤックから脱出。
あとはライフジャケットの浮力に導かれ川の上へ。

ぷはー。

そして、そのまま流されて行く、流されて行く、
されてく…。

 「どこまで行くのー?」

姉の声が川原からする。
って一人で上陸しとるんかい!?

 「姉ちゃん、助けてー!」
 「はっはっは~」姉の陽気な声が風に乗ってきた。「私は流行を追わないから~」

このまま私は日本海にいくんかい?

                         おしまひ。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

創作短編と申しましたが、
四万十川で肥満と川とか、
カワセミのお腹がオレンジのわけとか、
カヌーで沈して川底の岩とごっつんこあたりは…事実です。

結婚する前の三十路前半は、
毎週末のように、
ここ「カヌーの里おおち」で大騒ぎしてました。



あ、川の上では静かだったんですけどね、私。
だって、瀬がこわくて。
カヌーは川原でビールを呑むアウトドアです(笑)。

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by a-kik | 2008-10-15 10:07 | コラボ・広島ブログ

芥川賞最年『長』受賞に挑む柿(52になったよ)の日常。なんだかんだ走ってます。


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